母がデイサービスへ通い始めて、一番印象に残っているのは、お風呂に入れるようになったことだけではありませんでした。
父から、
「今日はお風呂に入れて嬉しかったと言っていたよ。」
そんな話を聞いた時、私は少し安心しました。
認知症になっても、嬉しいと感じることはある。
人の好き嫌いも相変わらずある。
母らしさは、まだちゃんと残っていたのです。
でも今振り返ると、本当に変わったのは母ではなく、家族の考え方だったように思います。
今回は、デイサービスを利用して初めて気づいたことについて振り返ってみたいと思います。
母が家でお風呂に入らなくなったことがきっかけで、弟からデイサービスを勧められました。
父は最初、あまり乗り気ではありませんでした。
家族だけで何とかしたい。
まだそこまでしなくても大丈夫。
そんな思いがあったのだと思います。
弟は何度も父と話をしました。
私も離れた横浜から状況を聞きながら、一緒に考え続けました。
すぐに決まったわけではありません。
少しずつ話を重ね、ようやく父も利用することを受け入れてくれました。
こうして母はデイサービスへ通い始めました。
利用を始めると、母は父に、
「今日はお風呂に入れて嬉しかったよ。」
と話していたそうです。
その話を弟から電話で聞いた時、私は本当に安心しました。
一方で、
「一緒にお風呂へ入った人はあまり好きじゃなかった。」
とも話していたそうです。
その話を聞いて思わず笑ってしまいました。
認知症になっても、人との相性や好き嫌いは変わらない。
母らしさはまだちゃんと残っている。
そう感じることができたからです。
その後は、デイサービスへ持って行った物を忘れて帰ることも増えました。
少しずつ変化は続いていました。
それでもデイサービスを利用したことで、家族には大きな変化がありました。
父には、母を心配しなくてもいい時間ができました。
母がお風呂に入り、安全に過ごしていると思える時間は、父にとっても大切な休息になっていたのだと思います。
私自身も遠く横浜から状況を見守る中で、「家族だけで抱え込まなくてもいい」と少しずつ考えられるようになりました。
当時は、デイサービスは介護サービスだと思っていました。
でも今は違います。
家族だけでは支えきれない部分を、一緒に支えてくれる存在だったのだと思っています。
そして今、当時を振り返ると、父を説得し続けた弟と私に「よく頑張った」と声を掛けてあげたい気持ちがあります。
あの時は、それが最善だと思って動きました。
人の力を借りることを受け入れるのは、父にとっても簡単なことではありませんでした。
だからこそ、家族みんなで少しずつ考え方を変えていけたことに意味があったのだと思います。
介護で変わるのは、親だけではありません。
家族も少しずつ変わっていきます。
私たち家族が変われたきっかけは、「家族だけで頑張らなければならない」という考えを手放したことでした。
人の力を借りることは、家族を諦めることではありません。
家族だけでは支えきれない部分を、一緒に支えてもらうことでした。
今でも、父を粘り強く説得し、デイサービスにつなげた弟と私に「よくやった」と伝えたいと思っています。
もし今、親の介護で一人や家族だけで抱え込んでいる方がいるなら。
「人の力を借りる」という選択肢について、一度立ち止まって考えてみるのも、一つの判断軸になるのかもしれません。


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